被告人は,本件事故の約半年前にも,10人乗りのいわゆるジャンボタクシーのレンタカーを運転中に,交通標識を見落とし,一時停止の違反をして検挙されているというのであって,かかる違反歴についても見過ごすことはできない。 被告人は,反省の弁を述べるものの,他方で,客観的証拠から認定できる事故の状況とは異なり,単なる記憶違いや思い違いとは言い難い独自の弁解に固執し,これに沿わない証拠はねつ造されたものであるなど主張して,本件における自らの責任を否定しているのであって,過失によるものとはいえ,自己の行為によって人を死に至らしめたことに対する真摯な反省の情を示すところがない。 |
「裁判官で運転免許を持っている人は、極めてまれなんです」と、鑑定人の石川さん。 学生時代に免許をとらず、任官後は万が一事故を起こす恐れを考慮して運転を控える人が多いことが理由だという。 普段車を運転する人なら感覚的に理解できることでも、免許を持っていない裁判官にとっては「抽象的な主張」ということになる。 |
しかも,被告人は,平成12年12月以降,交通違反歴2回を有しており,交通法規に対する遵法精神が希薄である。 |
自動車通勤していると年に 2 回以上出席しないといけない交通安全講習会を今週,久々に受講.3 か月前に 1 時間の講習を受けたばかりの身としては,それも 1 回にカウントして欲しいところなんですが :-(
今回も毎回代わり映えしないプログラムで,警察署からお呼びした交通課長代理様のありがたいお話 (管内の事故状況聞いてもあまり意味ないです... しかも,毎回「今年の」事故状況なもんだから,もう何回も聞いたってのがあるし) の後,ビデオ視聴.まぁ,いつだったかは「前回と同じかよ!」というビデオでしたが,今回のビデオは事故の起き方にフォーカスしていてちょっとばかり警察 24 時系で少しは楽しめましたが.
さて,今回のビデオにも出ていた「だろう運転」「かも知れない運転」という言葉が前から気になっています.キャッチフレーズとしてはいいのですが,元々の日本語の「だろう」「かも知れない」にはそれぞれ
・「だろう」=自分勝手な解釈
・「かも知れない」=細心の注意を払う
といった意味はもともとないのに,警察がそう決めつけて啓蒙している [1] のがとても気になるのです.
確かに,助動詞「だろう」は,話し手の主観を表すという点では間違いではないのですが,必ずしも (警察が言うように) 自分にとって都合のいい方向にだけ推量するということではない点,また,「かも知れない」は,可能性が低いことを示すときに使われる点において違和感があります.
まず初めに,「だろう」について考えると,
一方,「かも知れない」については,
さらに,「だろう」「かも知れない」との対比で言えば,同じく中畠 (1993) によれば,「ラシイ/ヨウダ/ソウダ (伝聞)」は「何らかの確認をしたことについて述べる」のに対し,「カモシレナイ/ニチガイナイ/ダロウ、マイ/ソウダ (様態)」は「未確認のことについて予測・推測する」とし,「だろう」と「かも知れない」は未確認の推量である点で機能的には変わらないことを指摘しています.
以上,「だろう運転」「かも知れない運転」という言葉に対する私の否定的な考えを,日本語学のいくつかの論文を引用しながら述べて来ましたが,日本語学という研究は,日本語のすべてを明らかにしている訳では当然なく,また,非常に残念なことですが,体系的に (網羅的・順番に) 行なわれている訳ではないので,「だろう」と「かも知れない」の使い分けについて既に研究が完了し,真実に到達しているとは限りません [3].実際に,今まで引用した以上の論文より古い寺村 (1974) では,「ダロウ (中略) のバリエーションとして、カモシレナイ、ニチガイナイなどを、まとめてムードの助動詞のうち、「概言的に状況を報道する表現」の助動詞とする」とだけ述べ,「だろう」「かも知れない」の違いに着目しようともしていないことからも判るように,こうした議論がなされているのはせいぜいこの 20 年くらいのようです.よって,まだまだこれらの違いは明らかにされていないだけという可能性は残っています.
しかしながら私としては,上記のようないくつかの知見や,私自身の語感から考えても,「だろう運転」「かも知れない運転」に特定の意味づけをすることには違和感を持っています.要するに,
何かが飛び出して来るだろう | 何も飛び出して来ないかも知れない | |
このまま行けば赤信号になるだろう | このまま行けば青信号のままかも知れない | |
路上に何か落ちているだろう | 路上には何も落ちていないかも知れない |
……などと,私が色々とこねくり回さないでも,アンサイクロペディアに素晴らしい記事が既にあります! ぜひ,「かもしれない運転」と「だろう運転」の項目を読んでください :-)
参考文献