車・自動車SNSみんカラ

2009年12月20日
ETC 前払割引サービスにおける前払いの受け付けが 4 年前の今日,終了しました.ETC 前払割引サービスは,それまでのハイウェイカードと同じ割引率となっており,\50,000 を前払いすると \8,000 (16%) のプレミアが付いて \58,000 分通行出来るというものでした.前払い額残高はプレミア分を含め 20 万円が上限となっていました.
(このため,以前書いた記事では,残高ゼロから積み増せるのは \50,000×3 となっているようです.今,この記事を読んで \50,000×4 の間違えじゃん... と思ってしまいました (苦笑).16% の最大還元率を確保出来るのは (\50,000+\8,000)×3=\174,000 という計算だったのですな)
同年春からは ETC マイレージサービスが始まっていましたが,以前も書いたように,非常に使い勝手が悪いと言わざるを得ません.具体的には,
  • 与えられるポイントに最大 2 年間 (最短 1 年 1 か月) という期限があること
    最大割引率となる 2,000points を貯めようとしても,2 年間で \50,000 分通行しなければ,最大還元率 (16%) を得られませんし,ポイントの失効の可能性すらあります.一方,ハイカ・ETC 前払割引サービスは無期限ですので,こうした問題は生じませんでした.
  • NEXCO 各社・本四高速社など事業主体ごとのカウントとなっていること
    しょっちゅう日本全国に行っているごく一部の人を除けば,例えば関東に住んでいる人が,旅行などでふだん使っていない阪神高速や本四連絡橋を使っても,\5,000 分の通行料で到達する 100points といった交換に必要な最低ポイント (本四橋の場合) に達するのは困難ですから,結局,全額切り捨てられることになります.たとえ上記有効期限の 2 年のうちに \5,000 分通行しても \200 分にしか交換出来ず,還元率は 4% でしかありません.もちろん,ハイカ・ETC 前払割引サービスではこうしたことは生じず,\50,000 の前払いをしていれば ETC 通行出来るどの有料道路でも 16% という最大還元率を享受出来ました.
  • ポイント積算単位が \50 につき 1 ポイントとなっていること
    すなわち,\50 以下の通行料金は切り捨てられてしまいます.一方,ハイカ・ETC 前払割引サービスではこうしたことは生じません.
  • 首都高速はそもそも ETC マイレージサービスに参加していないこと
    あり得ませんね(;´Д`)
といった点があります.ETC マイレージサービスは,○倍ポイントキャンペーンなどをやっていてお得なようにも見えましたが,それも一時期だけでしたね... そこで私は,前払い受け付け終了日に,上限のほぼいっぱいになるよう,\50,000 を 3 口前払いしたのでした.それから 4 年.\186,819 あった残高は今... \149,879 減って,\36,940 になっています.4 年前,上限いっぱいまで前払いをするか検討していたときは「あと 3 年くらいかかって消費することにな」り,16%÷3 年 なので「年間あたり 5% 以上の "利率"」と試算していたのですが,既に 4 年経過し,4% に下がっています (苦笑).これはその後,首都高速だけはいつまで経っても ETC マイレージサービスに参加しないので,ETC 前払割引サービスに登録した ETC カードを首都高速 (と阪神高速など) 専用とし,NEXCO 用には新たに ETC カードを作成してそちらを使っているので,前払いした残高が「温存」されているためです.
このように首都高でしかこのカードを使いませんから,この 1 年間では \5,160 しか使いませんでした.この分だとあと 7 年持ちます(^^;  当然,利率はどんどん下がっていく訳ですが,依然として低金利時代が続いていますし,総支払額はお得なままなのでまぁよしとしますか...
2009年12月11日
「あの時、バスは止まっていた 高知「白バイ衝突死」の闇」という本を買って読みました.ご存じの方も多いかも知れませんが,これは「高知白バイ冤罪事件」(と,敢えてここでは書きます) の経緯を記したドキュメンタリー.2006.03.03 に,高知県吾川郡春野町の国道 56 号で,路外から右折して道路に (道路を横断する形で) 進入していたバスと高知県警の白バイが衝突し,白バイ隊員が事故死した事故が発端.運転していた片岡晴彦さんは逮捕され,業務上過失致死傷で高知地裁で有罪判決を受け,二審の高松高裁は実質的な審理をすることなく即日結審し控訴棄却,最高裁も上告を棄却し,有罪 (実刑) が確定したものです.
当初から,片岡さんは車の列が途切れるのを待ってバスを停止させていたところに白バイが衝突して来たと訴え,それを裏付ける,バスに乗っていた多数の生徒の証言や,白バイが 100km/h 前後の猛スピードで R56 を走行していたとする証言などがあるにもかかわらず,警察・検察側の証拠のみが全面的に採用され,有罪に至った判決で,冤罪を疑う声が大きい事件です.さらには,警察が証拠として提出した「ブレーキ痕」を捏造した片岡さん側は主張しています.片岡さんは,最高裁での上告棄却・判決確定後収監され,来年 2 月までの禁固 1 年 4 か月の実刑で加古川刑務所に服役しています.
詳しくは,片岡晴彦さんを支援する会 Web サイト,Wikipedia の高知白バイ衝突死事故などを参照ください.

私がこの事件を知ったのがいつだったか忘れてしまいましたが,TV での報道でだったと思います.瀬戸内放送が 1 審判決後,精力的に取材・報道しており,その内容は瀬戸内放送の Web サイトでも動画で見られるようになっています.
私は最近知ったのですが,carview での掲示板でも活発に議論がなされ,ブレーキ痕は片岡さん側が主張するように「バスは停止していたのにブレーキ痕が生じることはあり得ず,状況証拠から見ても警察が捏造したもの」ではなく,バスに猛スピードで白バイが衝突したことにより生じた「横滑り」の際に出来たものであって,バスが停止していたことには変わりないが,警察による全くの捏造では少なくともないとする「横滑り論」もあるようです.このあたりは,ここみんカラで,バス乗りというニックネームでいい日旅立ちというタイトルのブログでまとめている方がいます (この本を買って再びこの事件について調べているときに初めて知りました).

この本は,TV で見たり Web で調べたりしてして私が知っている内容を,時系列に従って漏れなくよくまとめていると思います.興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか.そう厚い本ではないので,目新しい内容は特にないのですが,今回,この本を読んでぞっとしたことがあります.
片岡さん自身が主張しているように,裁判で認定された「右方向の安全確認を怠って車道に進入した過失」に対して異論を唱え,バスに乗っていた生徒たちの証言が証拠採用されない中,警察・検察側証拠に対して異を唱えていることを捉えて「独自の弁解に固執」しているから執行猶予は付けないという論理も既に指摘されているとおり非常に乱暴だと思います.しかし,私がそれ以上に気になったのは,
 被告人は,本件事故の約半年前にも,10人乗りのいわゆるジャンボタクシーのレンタカーを運転中に,交通標識を見落とし,一時停止の違反をして検挙されているというのであって,かかる違反歴についても見過ごすことはできない。
 被告人は,反省の弁を述べるものの,他方で,客観的証拠から認定できる事故の状況とは異なり,単なる記憶違いや思い違いとは言い難い独自の弁解に固執し,これに沿わない証拠はねつ造されたものであるなど主張して,本件における自らの責任を否定しているのであって,過失によるものとはいえ,自己の行為によって人を死に至らしめたことに対する真摯な反省の情を示すところがない。
という高知地裁の一審判決文と,この本に書かれた
「裁判官で運転免許を持っている人は、極めてまれなんです」と、鑑定人の石川さん。
 学生時代に免許をとらず、任官後は万が一事故を起こす恐れを考慮して運転を控える人が多いことが理由だという。
 普段車を運転する人なら感覚的に理解できることでも、免許を持っていない裁判官にとっては「抽象的な主張」ということになる。
という記載 (60p).
免許停止や免許取消であったり,故意に一時停止を無視した運転をしていたのであればともかく,「標識を見落とし」た違反を殊更取り上げて,「量刑の理由」とする恐ろしさです.そして,それの判決文を書いているのが運転免許を持っていない (と強く推認される) 職業裁判官...
さらに,高松高裁の第二審判決文では,
しかも,被告人は,平成12年12月以降,交通違反歴2回を有しており,交通法規に対する遵法精神が希薄である。
などと言い切っています.8 年間における 2 回の交通違反 (しかも,1 回は一時停止違反) によって「順法精神が希薄」と言えるのなら,車検を通らないパトカーを運用したり道交法違反を "頻発" させる警察組織っていったい何なのでしょう?  高知地裁・高松高裁の論理で言えば,こうしたれっきとした証拠がある以上,事故死した白バイ隊員は 60km/h の法定速度を超えて走行していなかったとは言えませんね.
自分が持っていない (一度も持ったことがない...) からの負け惜しみかも知れませんが,5 年間無事故無違反で交付されるゴールド免許が「ウンコ色免許」と揶揄されるのも,周囲の交通に合わせた一般的な運転であっても 1 年あたり 10,000km とか 20,000km とかのある程度の距離を走ると,どうしても軽微な違反をしてしまって,ゴールド免許はペーパードライバーにしか結局のところ交付されないという実態が少なからずあるからだと考えますが,そうした,しかも過失による軽微な一時停止違反が執行猶予なしの実刑判決に結びつく,これはハンドルを握るものとして非常に恐怖ではないでしょうか.

また,一貫して証拠の捏造の可能性を訴え,新たな証拠の提出もしているのに,実質的な審理が二審・三審でなされていないことも,いつどんな理由で被告の立場に立たされるかも知れないことを考えると恐怖を覚えます.
2008.12.01 にテレビ朝日系列の番組,「報道発 ドキュメンタリ宣言」で放映された「なぜ私が収監されるのか ~高知白バイ事故の真相~」においてジャーナリストの大谷昭宏氏が語っていた言葉が思い出されます.「地方の検察官は 3,4 年生が多く,4,5 人.警察の圧倒的なマンパワーに対抗しようとする雰囲気ではなく,波風を立てないように過ごすことになる.裁判官も同様で,それを追認する」という趣旨の発言でした (放送の内容の一部をこちらでは動画で見られますが,残念ながらこの部分はありません).まさか,いくら高知県が「地方」だからといって,『野生の証明』で描かれていた '羽代市' における大場総業と官との癒着のような,腐りきった警察・検察組織などないと信じたいところですが,そうした可能性さえあることにも,さらに恐怖を感じます.

なお,上告を棄却した最高裁の裁判官は以下の 4 名でした:
これらの裁判官の名前を敢えて記したのは,最高裁判所裁判官国民審査で「×」を付けるためだったのですが... この夏の衆議院議員総選挙の際に行なわれた最高裁判所裁判官国民審査で,これらの裁判官に対してきちんと「×」をしていたかどうか不安になったので調べてみると,驚くべき事実が判りました.これらの裁判官はいずれも,2005 年に行なわれた最高裁判所裁判官国民審査で審査を受けており,法の定めにより次の審査は 10 年経過した後の総選挙の際となっていたのです.すなわち,2005 年の審査の次は 2015 年以降.10 年間は無審査で判事を続けられるという訳です (総選挙のタイミングによっては約 14 年間).こんな骨抜きの制度とは知りませんでした.
津野裁判官は 2008 年に定年退官していますし,そのほかの判事もこの制度の恩恵を受け (?),今井判事と中川判事はいずれも 70 歳で今年度 (今年?) 中には定年退官予定,残る古田判事も 67 歳で,次回の国民審査を待たずに定年退官となるため,彼らを不信任とするチャンスは現行法下ではもう来ません.

2009年12月04日
「当たり屋グループがこのあたりに来ている」「当たり屋グループのナンバーは山口・関西地方のもの」「2~3 台で組んで活動しており,狙ったクルマの前後を挟み,後ろのクルマがクラクションを鳴らし,注意をそらした瞬間に前のクルマが停まってぶつけさせる」なんて内容が書かれた FAX や掲示,コピーなどを見たことはありませんか?

これ,ずいぶんと前から繰り返し流されているデマ情報で,Internet が普及していない時代からあるものが,手段を変えていまだに流布しているようです.中には,警察署名が書かれていて,いかにも警察が流した体裁となっているものもあるようですが,その警察自体が明確に否定しています

私がこのデマ情報を知ったのは 20 年以上前.いまだになくならず全国をさまよっているのですね... 冒頭の画像は,私がこれを初めて知ったときのもので 1987/04/11 付けの朝日新聞のコピー.報道された内容としてはかなり古いでしょ,と思っていたのに,調べてみると,1986/11/18 付けの読売新聞地方版 (丹後版) で報道されているのが,現在確認されている最古の報道なんだとか.くそー,5 か月負けた (笑).

振り込め詐欺と違って,ひっかかっても実害ないとは言えますが,デマ情報の伝達者にはなりたくないもの.当たり屋情報に限らず,こうした情報に触れたときにはその真偽をまずは確かめたいものです.
2009年12月01日
昔,毎日のように長距離ドライブをしていた時期があったことを以前書きました.これもそのころの話.

いつものように夜,よく走っている北に向けて走っている途中,ドライブのお供にスナック菓子を買うためだったか,トイレを借りたかったのか,目的は忘れてしまったけれども国道沿いのセブン-イレブンに寄って,入り口のすぐ近くにクルマを駐めた.そのころ乗っていたのは私にとって初めてのクルマ,SUBARU JUSTY.ちなみに,今も昔も 5MT 車にしか乗ったことがありません.
ほんの数分,そのコンビニでの買い物 (and/or トイレ) を済ませてドアを開けてコンビニを出た瞬間,猛烈な違和感が私の頭を襲い,足から抜けていくような感覚を感じました.ここにさっき駐めた私のクルマがない!  国道沿いとはいえ,深夜ですからこのコンビニの駐車場もがらがらゆえ,入口のすぐ脇にすんなり駐められました.それは,たった何分か前のこと.実は店の裏だった,なんて記憶違いをしていようがありません.もしかして,鍵をかけ忘れて誰かに盗まれた?  何も,総額 100 万もしない 1,200cc の安物を盗る必要はないと思うけれど,犯罪で使うためならクルマなら何でもよいのかも... コンビニ駐車場ですから,レッカー移動されたなんてことはあり得ません.呆然と立ちつくしている間に嫌な予感が頭をよぎります.

そんなことを 1,2 秒考えた後,クルマを探すでもなく,その広い駐車場の,国道から駐車場への入口付近,歩道のあたりに視線を移しました.そこに見えたのは... 明らかに私の JUSTY.なぜそこに?  もう一度考えますが,絶対にここ,店舗の入口から一番近いスペースに駐めました.なぜあそこまで移動しているのか.誰かが乗っている? 恐る恐るながらも小走りに近づき,ドアを開けようとしますがロックされています.助手席側に回って (JUSTY は 3 ドア車でした) 助手席を確認しますがやはり閉まっています.ここも駐車スペースですが,ここに駐めたなんてことは絶対にありません.ではロックもきちんとされているし,鍵も今手元にあるクルマが移動したのはなぜ?
とりあえず運転席側に戻り,鍵を開け,車内に入りました.まだ心臓のどきどきが完全には収まりませんが,もしかしたら本当に私の思い違いなのかも知れません.いつまでも思い悩んでいても仕方ないので,クルマを出すことにしますか... とその瞬間,更なる違和感を左手に感じました.サイドブレーキがかかっていない!  そうです,コンビニ店舗から道路に向かって,この広い駐車場は緩やかな坂になっているのです.店舗脇の駐車スペースにクルマを駐め,サイドブレーキをかけずに私がクルマを離れた後,無人になった JUSTY は国道に向かって空走を始め,たまたま反対側にあった駐車スペースの車止めに突っ込み,停止したのでした.

走って行った先に障害物がなく,そのまま国道に出ていれば,いくら深夜とはいえ,1 桁国道.交通量が多い道ですので,重大な事故となっていたかも知れません.現に今走って行ったあんな大型トレーラーに衝突していたら... 陳腐な表現ですが,まさに肝が冷えます.
走って行った先に車止めがあっても,仮に,駐車スペースにクルマが駐まっていれば,無人のクルマであっても当然,事故になっていました.
無人で走っている途中,誰か歩行者にぶつかっていたら,ひき殺してしまっていたかも知れません.何しろ,エンジンがかかっていませんから,ほとんど音はしなかったはずです.当然ライトも点いていません.もし,後ろから襲って来たら気付くことは不可能に近いでしょう...
そんな風に,他人への危害を及ぼさなくとも,走って行った先が車止めではなく,単なる壁だったりガードレールだったりしたら,JUSTY のフロントはかなり潰れていたかも知れません.
それらのいくつものパラメータがすべていい方向に倒れ,私がサイドブレーキを引き忘れて空走を始めた JUSTY は幸い,その延長線上にあった駐車スペースまで移動し,どれくらいの衝撃だったのかは想像出来ませんが車止めにしっかりと 2 本の前輪がぶつかり,車止めはその機能を想像以上に果して,私の JUSTY を止めたのでした.どれかひとつでもこれらの偶然が重なることがなければ,もしかすると今後,クルマには一生乗れないくらいの痛手を被っていたかも知れませんし,そこまでではないとしても修理費用が発生していたでしょう... ただただ,偶然に感謝するしかありませんでした.
2009年11月27日

自動車通勤していると年に 2 回以上出席しないといけない交通安全講習会を今週,久々に受講.3 か月前に 1 時間の講習を受けたばかりの身としては,それも 1 回にカウントして欲しいところなんですが :-(
今回も毎回代わり映えしないプログラムで,警察署からお呼びした交通課長代理様のありがたいお話 (管内の事故状況聞いてもあまり意味ないです... しかも,毎回「今年の」事故状況なもんだから,もう何回も聞いたってのがあるし) の後,ビデオ視聴.まぁ,いつだったかは「前回と同じかよ!」というビデオでしたが,今回のビデオは事故の起き方にフォーカスしていてちょっとばかり警察 24 時系で少しは楽しめましたが.

さて,今回のビデオにも出ていた「だろう運転」「かも知れない運転」という言葉が前から気になっています.キャッチフレーズとしてはいいのですが,元々の日本語の「だろう」「かも知れない」にはそれぞれ
 ・「だろう」=自分勝手な解釈
 ・「かも知れない」=細心の注意を払う
といった意味はもともとないのに,警察がそう決めつけて啓蒙している [1] のがとても気になるのです.

確かに,助動詞「だろう」は,話し手の主観を表すという点では間違いではないのですが,必ずしも (警察が言うように) 自分にとって都合のいい方向にだけ推量するということではない点,また,「かも知れない」は,可能性が低いことを示すときに使われる点において違和感があります.

まず初めに,「だろう」について考えると,

ダロウは,ソウダと違い,現実がそう予想・想像させるだけの性質をそなえていなくても使える。
(菊池, 2000)
仮想の世界での推測に用いることのできるダロウ
(中畠, 1990)
という指摘があるように,目に見える状況や事実の伝聞などによる客観的な根拠に基づかない推量を示すことが確かにあります.また,
いわば最低限に文の「確信」性を否定=限定するような正確を示している。(中略) 少なくとも「確言」ではないという性質を文に付与するという、見ようによっては若干「消極的」なものであると言えよう。
(柏木, 2003)
という性質を持つ言葉でもあり,「だろう」は言及する内容について,客観的な根拠を必要としないこともあって,その真偽の正確性も担保されていないと考えるべきでしょう.従って,「だろう運転」というのは,「自分の都合のいいように状況を解釈して運転すること」につながる可能性はあり,その点は間違っていないのですが,それだけではないのも事実です.

一方,「かも知れない」については,

「かもしれない」の表す<蓋然性>は、確からしさの低い、そうでないこともあるといった含みを有するものであることが分かる。
(仁田, 1981)
「~かもしれない」はその可能性があまり高くないと判断された場合に用いられる。
(野田, 1984)
という指摘が複数あります.従って,忠実に「かも知れない運転」をするとしたら,極めて可能性が低いことも考慮しなければならず,自動車専用のバイパス道路において「迷い込んだ人が歩いているかも知れない」などと考える必要が出て来てしまい,制限速度は今でも十分に高過ぎるということになって [2],交通が機能しなくなったり,「日常点検はきちんとしているが,タイヤが外れるかも知れない」「前を走るミニバンのリアドアが突然開いて,子供が転がり落ちて来るかも知れない」などと考え始めたら,もう運転どころの騒ぎではなく,「かも知れない運転」は非常に現実的ではないように私には響きます.そんなに「かも知れない」と考えたいのなら,クルマに乗るべきではないです.
さらには,
カモシレナイ・ニチガイナイを用いれば、事実、現実の自体が明らかでも、それに無頓着に予測、推測を行なうことが可能になる。したがって、条件の設定自体を荒唐無稽なものにしたり、勝手で無責任な空想、架空の世界を表現したりすることが許される。
(中畠, 1993)
という理由により,「赤信号を無視しても事故は起きないかも知れない」「際どいタイミングではあるけれども,もうちょっとアクセルを踏めば,あの隙間に合流出来るかも知れない」といった「勝手で無責任な空想」が可能になり,「だろう」とまったく変わるところはないのです.

さらに,「だろう」「かも知れない」との対比で言えば,同じく中畠 (1993) によれば,「ラシイ/ヨウダ/ソウダ (伝聞)」は「何らかの確認をしたことについて述べる」のに対し,「カモシレナイ/ニチガイナイ/ダロウ、マイ/ソウダ (様態)」は「未確認のことについて予測・推測する」とし,「だろう」と「かも知れない」は未確認の推量である点で機能的には変わらないことを指摘しています.

以上,「だろう運転」「かも知れない運転」という言葉に対する私の否定的な考えを,日本語学のいくつかの論文を引用しながら述べて来ましたが,日本語学という研究は,日本語のすべてを明らかにしている訳では当然なく,また,非常に残念なことですが,体系的に (網羅的・順番に) 行なわれている訳ではないので,「だろう」と「かも知れない」の使い分けについて既に研究が完了し,真実に到達しているとは限りません [3].実際に,今まで引用した以上の論文より古い寺村 (1974) では,「ダロウ (中略) のバリエーションとして、カモシレナイ、ニチガイナイなどを、まとめてムードの助動詞のうち、「概言的に状況を報道する表現」の助動詞とする」とだけ述べ,「だろう」「かも知れない」の違いに着目しようともしていないことからも判るように,こうした議論がなされているのはせいぜいこの 20 年くらいのようです.よって,まだまだこれらの違いは明らかにされていないだけという可能性は残っています.

しかしながら私としては,上記のようないくつかの知見や,私自身の語感から考えても,「だろう運転」「かも知れない運転」に特定の意味づけをすることには違和感を持っています.要するに,

何かが飛び出して来るだろう 何も飛び出して来ないかも知れない
このまま行けば赤信号になるだろう このまま行けば青信号のままかも知れない
路上に何か落ちているだろう 路上には何も落ちていないかも知れない

でも全然おかしくないのです.それを無理矢理,「だろう」を悪者に,「かも知れない」を善玉に仕立て上げてキャッチフレーズ化するのは無理があるように思います.そんな時代劇における勧善懲悪話のようなカビの生えた二分論は本来は必要なく,単に,"「安全だろう」「誰も飛び出して来ないかも知れない」といった漫然運転ではなく,「ブラインドカーブだから注意が必要だろう」「障害物が落ちているかも知れない」という防衛運転を心がけましょう" といった表現をすれば済むと思うのです.

……などと,私が色々とこねくり回さないでも,アンサイクロペディアに素晴らしい記事が既にあります! ぜひ,「かもしれない運転」と「だろう運転」の項目を読んでください :-)

[1] 例えば冒頭の画像に掲げた長野県警の例の (参考文献参照) ほかにも,Web 上だけでも次のような資料がある:
・静岡県警察本部 (2008) 「普通第二種免許に係る届出自動車教習所が行う教習の課程の指定」
 http://www.police.pref.shizuoka.jp/seido/sinsakizyun/kj35-270-12.pdf
・大阪府警察本部 (不明) 「33条6-2-1ハ 普通二輪免許に係る教習の課程の指定(別紙)」
 http://www.police.pref.osaka.jp/01sogo/kouhyo/shinsa/images/19dourokoutsu_s/doko_aa092_2.pdf
・北海道警察本部 (2009) 「交通安全情報」
 http://www.police.pref.hokkaido.jp/info/koutuu/anzen_jyouho/anzen-jyouho210617.html
・茨城県警察本部 (2008) 「交通安全かわら版」
 http://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/02_koutsu/01_jikobousi/kawara/document/h20/h20-44.pdf
静岡県警・大阪府警の資料は内容がほとんど同じであり,重複するのでこれ以上挙げないが,ほかにも山形県警でも同様の文書を公開していることを考えると,警察庁の通知などに典拠があり,全国で同じ「審査基準」の文書が作られていると思われる.すなわち,警察が交通行政において '組織的に' この言葉を使用していることが判る. [→ back]
[2] 私の知っている複数の「工場」構内の最高速度表示は 8km/h です.これは絶対に構内で交通事故を起こさないという強い意志のあらわれなのでしょう.逆に言うと,それくらいの速度じゃないと危険は排除出来ないということです.幸い,私の勤務先の構内制限速度は 20km/h ですが... これは徐行速度ってことでしょうね. [→ back]
[3] それに,私が引用していない論文に非常に重要なものがあるかも知れませんし... まぁそこは,別にここで学術論文を書きたい訳ではないってことでご容赦を. [→ back]

参考文献

・菊地 康人 (2000) 「「ようだ」と「らしい」 ──「そうだ」「だろう」との比較も含めて──」 『國語學』 第 51 巻 1 号
・中畠 孝幸 (1990) 「不確かな判断 ──ラシイとヨウダ──」 『三重大学 日本語学文学』 第 1 号
・柏木 成章 (2003) 「「だろう」の意味」 『別科日本語教育 (大東文化大学別科論集)』 第 5 号
・仁田 義雄 (1981) 「可能性・蓋然性を表わす擬似ムード」 『国語と国文学』 第 58 巻 5 号
・野田 尚史 (1984) 「~にちがいない/~かもしれない/~はずだ」 『日本語学』 第 3 巻 10 号
・中畠 孝幸 (1993) 「確かさの度合い ──カモシレナイ・ニチガイナイ──」 『三重大学 日本語学文学』 第 4 号
・寺村 秀夫 (1979) 「ムードの形式と意味 (1) ──概言的報道の表現──」 『文藝言語研究 言語篇』 第 4 号

冒頭の画像は,以下のページより引用
長野県警察本部交通企画課 (2009) 「あなたの街の交通事故 望月警察署管内」 http://www.pref.nagano.jp/police/kouhou/machi/jiko/23mochizuki-j.htm



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