車・自動車SNSみんカラ

2009年12月11日
「あの時、バスは止まっていた 高知「白バイ衝突死」の闇」という本を買って読みました.ご存じの方も多いかも知れませんが,これは「高知白バイ冤罪事件」(と,敢えてここでは書きます) の経緯を記したドキュメンタリー.2006.03.03 に,高知県吾川郡春野町の国道 56 号で,路外から右折して道路に (道路を横断する形で) 進入していたバスと高知県警の白バイが衝突し,白バイ隊員が事故死した事故が発端.運転していた片岡晴彦さんは逮捕され,業務上過失致死傷で高知地裁で有罪判決を受け,二審の高松高裁は実質的な審理をすることなく即日結審し控訴棄却,最高裁も上告を棄却し,有罪 (実刑) が確定したものです.
当初から,片岡さんは車の列が途切れるのを待ってバスを停止させていたところに白バイが衝突して来たと訴え,それを裏付ける,バスに乗っていた多数の生徒の証言や,白バイが 100km/h 前後の猛スピードで R56 を走行していたとする証言などがあるにもかかわらず,警察・検察側の証拠のみが全面的に採用され,有罪に至った判決で,冤罪を疑う声が大きい事件です.さらには,警察が証拠として提出した「ブレーキ痕」を捏造した片岡さん側は主張しています.片岡さんは,最高裁での上告棄却・判決確定後収監され,来年 2 月までの禁固 1 年 4 か月の実刑で加古川刑務所に服役しています.
詳しくは,片岡晴彦さんを支援する会 Web サイト,Wikipedia の高知白バイ衝突死事故などを参照ください.

私がこの事件を知ったのがいつだったか忘れてしまいましたが,TV での報道でだったと思います.瀬戸内放送が 1 審判決後,精力的に取材・報道しており,その内容は瀬戸内放送の Web サイトでも動画で見られるようになっています.
私は最近知ったのですが,carview での掲示板でも活発に議論がなされ,ブレーキ痕は片岡さん側が主張するように「バスは停止していたのにブレーキ痕が生じることはあり得ず,状況証拠から見ても警察が捏造したもの」ではなく,バスに猛スピードで白バイが衝突したことにより生じた「横滑り」の際に出来たものであって,バスが停止していたことには変わりないが,警察による全くの捏造では少なくともないとする「横滑り論」もあるようです.このあたりは,ここみんカラで,バス乗りというニックネームでいい日旅立ちというタイトルのブログでまとめている方がいます (この本を買って再びこの事件について調べているときに初めて知りました).

この本は,TV で見たり Web で調べたりしてして私が知っている内容を,時系列に従って漏れなくよくまとめていると思います.興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか.そう厚い本ではないので,目新しい内容は特にないのですが,今回,この本を読んでぞっとしたことがあります.
片岡さん自身が主張しているように,裁判で認定された「右方向の安全確認を怠って車道に進入した過失」に対して異論を唱え,バスに乗っていた生徒たちの証言が証拠採用されない中,警察・検察側証拠に対して異を唱えていることを捉えて「独自の弁解に固執」しているから執行猶予は付けないという論理も既に指摘されているとおり非常に乱暴だと思います.しかし,私がそれ以上に気になったのは,
 被告人は,本件事故の約半年前にも,10人乗りのいわゆるジャンボタクシーのレンタカーを運転中に,交通標識を見落とし,一時停止の違反をして検挙されているというのであって,かかる違反歴についても見過ごすことはできない。
 被告人は,反省の弁を述べるものの,他方で,客観的証拠から認定できる事故の状況とは異なり,単なる記憶違いや思い違いとは言い難い独自の弁解に固執し,これに沿わない証拠はねつ造されたものであるなど主張して,本件における自らの責任を否定しているのであって,過失によるものとはいえ,自己の行為によって人を死に至らしめたことに対する真摯な反省の情を示すところがない。
という高知地裁の一審判決文と,この本に書かれた
「裁判官で運転免許を持っている人は、極めてまれなんです」と、鑑定人の石川さん。
 学生時代に免許をとらず、任官後は万が一事故を起こす恐れを考慮して運転を控える人が多いことが理由だという。
 普段車を運転する人なら感覚的に理解できることでも、免許を持っていない裁判官にとっては「抽象的な主張」ということになる。
という記載 (60p).
免許停止や免許取消であったり,故意に一時停止を無視した運転をしていたのであればともかく,「標識を見落とし」た違反を殊更取り上げて,「量刑の理由」とする恐ろしさです.そして,それの判決文を書いているのが運転免許を持っていない (と強く推認される) 職業裁判官...
さらに,高松高裁の第二審判決文では,
しかも,被告人は,平成12年12月以降,交通違反歴2回を有しており,交通法規に対する遵法精神が希薄である。
などと言い切っています.8 年間における 2 回の交通違反 (しかも,1 回は一時停止違反) によって「順法精神が希薄」と言えるのなら,車検を通らないパトカーを運用したり道交法違反を "頻発" させる警察組織っていったい何なのでしょう?  高知地裁・高松高裁の論理で言えば,こうしたれっきとした証拠がある以上,事故死した白バイ隊員は 60km/h の法定速度を超えて走行していなかったとは言えませんね.
自分が持っていない (一度も持ったことがない...) からの負け惜しみかも知れませんが,5 年間無事故無違反で交付されるゴールド免許が「ウンコ色免許」と揶揄されるのも,周囲の交通に合わせた一般的な運転であっても 1 年あたり 10,000km とか 20,000km とかのある程度の距離を走ると,どうしても軽微な違反をしてしまって,ゴールド免許はペーパードライバーにしか結局のところ交付されないという実態が少なからずあるからだと考えますが,そうした,しかも過失による軽微な一時停止違反が執行猶予なしの実刑判決に結びつく,これはハンドルを握るものとして非常に恐怖ではないでしょうか.

また,一貫して証拠の捏造の可能性を訴え,新たな証拠の提出もしているのに,実質的な審理が二審・三審でなされていないことも,いつどんな理由で被告の立場に立たされるかも知れないことを考えると恐怖を覚えます.
2008.12.01 にテレビ朝日系列の番組,「報道発 ドキュメンタリ宣言」で放映された「なぜ私が収監されるのか ~高知白バイ事故の真相~」においてジャーナリストの大谷昭宏氏が語っていた言葉が思い出されます.「地方の検察官は 3,4 年生が多く,4,5 人.警察の圧倒的なマンパワーに対抗しようとする雰囲気ではなく,波風を立てないように過ごすことになる.裁判官も同様で,それを追認する」という趣旨の発言でした (放送の内容の一部をこちらでは動画で見られますが,残念ながらこの部分はありません).まさか,いくら高知県が「地方」だからといって,『野生の証明』で描かれていた '羽代市' における大場総業と官との癒着のような,腐りきった警察・検察組織などないと信じたいところですが,そうした可能性さえあることにも,さらに恐怖を感じます.

なお,上告を棄却した最高裁の裁判官は以下の 4 名でした:
これらの裁判官の名前を敢えて記したのは,最高裁判所裁判官国民審査で「×」を付けるためだったのですが... この夏の衆議院議員総選挙の際に行なわれた最高裁判所裁判官国民審査で,これらの裁判官に対してきちんと「×」をしていたかどうか不安になったので調べてみると,驚くべき事実が判りました.これらの裁判官はいずれも,2005 年に行なわれた最高裁判所裁判官国民審査で審査を受けており,法の定めにより次の審査は 10 年経過した後の総選挙の際となっていたのです.すなわち,2005 年の審査の次は 2015 年以降.10 年間は無審査で判事を続けられるという訳です (総選挙のタイミングによっては約 14 年間).こんな骨抜きの制度とは知りませんでした.
津野裁判官は 2008 年に定年退官していますし,そのほかの判事もこの制度の恩恵を受け (?),今井判事と中川判事はいずれも 70 歳で今年度 (今年?) 中には定年退官予定,残る古田判事も 67 歳で,次回の国民審査を待たずに定年退官となるため,彼らを不信任とするチャンスは現行法下ではもう来ません.



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(2006.07 に "AXELA" からハンドルを変えました) アクセラならびにプジョー 206 CC に関するブログを中心に構成して行きます.AXEL...
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